こんにちは、農家の方に特化して家計のお悩み解決をお手伝いしています
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
個人として農業を営んでいる場合、毎年2月15日~3月15日前後の間に確定申告をして1年間の所得を申告する必要がありますよね。
2020年は2月17日(月)~3月16日(月)まででしたが、2020年は新型肺炎の影響により4月16日(木)まで延長されました。
1年間の所得を計算して所定の用紙に記入したりして申告するのでも正直面倒だと感じる農家さんがほとんどではないでしょうか。
(僕も個人事業主なので確定申告が必要ですが正直面倒くさいと感じます・・・笑)
また、その確定申告の中でも、特に農家さんにとってネック?になるのが青色申告ですよね。
白色申告に比べて青色申告では複式簿記などが必要とされていますが、最近ではソフトなどを使えば青色申告もだいぶ簡単になって来ています。
ただ、それでも税制の改訂などが入ったりして、「去年と同じように~」と構えてられない事も多いです。
青色申告やってるけどいまいちよく分かっていない、これから青色申告をやろうと思っている方の為にも、その仕組みやメリット、これからの注意点などをご紹介していきたいと思います!
目次
農家の青色申告と白色申告
冒頭でも書きましたが、確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告をしている農家はどのくらい?
現在農家さんの中で青色申告をしているのは、全体の約3割くらいと言われています。
初めて聞いた時に正直少ないっ!本当かな?と思ったのですが、農水省の統計によるとH28年の販売農家の戸数が126万戸となっているのですが、それに対して農業所得者の青色申告者の人数はH28年は44.5万人となっています。
つまり、ざっくりですが44.5万人を126万戸で割ったら約35%程度になるので、おおむね3割というのは間違いないのかなと思います。
若くて就農する方は農業次世代人材投資事業などの準備型や経営開始型の給付を受けたり、認定新規就農者などには青色申告はその要件になっているので、最初から青色申告をするという方も多いでしょう。
また、昨年から始まった収入保険制度についても青色申告が必須ですので、この割合は少し増えていくのかなと思っています。
※ちなみに収入保険制度についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、よければ合わせてご覧下さい。
青色申告と白色申告の違い
ネックなのは現在は白色申告をしていて、これから青色申告をしようという人は、結局青色申告と白色申告はどう違うの?という方も多いかと思います。
既に農業をしている方は既にお分かりだと思いますが、青色申告は白色申告に比べて詳しく申告をする必要があります。
ですが、その分様々なメリットを受けることが出来て所得を下げることが出来るので、多少手間でも頑張って青色申告にチャレンジされてみて下さいね!
以下に簡単な青色申告と白色申告の違いをまとめてみたのでご参考にされてみて下さい。
青色申告 | 白色申告 | |
特徴 | ・10 、55万、65万の特別控除 ※2020年分から変更について後述 ・純損失(赤字)の3年間の繰り越し ・減価償却の特例を受けられる ・専従者給与が全額経費に ※詳しくはこちらの記事で説明しています →個人農家の節税まとめ |
専従者控除として専従者給与の一部が必要経費 →配偶者86万 →その他50万 |
提出書類 | ・確定申告書B ・青色申告決算書 (損益計算書、貸借対照表) ・各種控除関係の書類 ・源泉徴収票※(給与所得などがあった場合) |
・確定申告書B ・収支内訳書 ・各種控除関係の書類 ・源泉徴収票※(給与所得などがあった場合) |
記帳方法 | ≪複式簿記≫ →仕訳帳 →総勘定元帳 →現金・預金出納帳 →経費帳 →売掛・買掛帳 →固定資産台帳 |
・法定帳簿 (収入や必要経費を記載したもの) |
青色申告をすると節税出来る金額
特に青色申告を行うことで受けられる特別控除(こうじょ)は、お金を使わずにその分を経費のような形で農業所得から差し引く事が出来て、
その分所得に応じて金額の変動する所得税や住民税や国民健康保険料が安くなります。
例えば最大65万円の控除を受ける場合に、それらの税率が合わせてざっくり20%だったとしたら年間13万円も手取りが増える事になります。
毎月1万円以上手取りが増えると考えれば青色申告をしないわけにはいきませんよね。
青色申告特別控除と基礎控除の改正
ただ、ここで1つ覚えていて貰いたいのが、2020年度分(令和2年度)の申告からは、この青色申告特別控除が65万円→55万円に引き下げられます。
既に青色申告をしている方は「うわっ、税金あがっちゃうじゃん」と思われるかもしれませんが、そこはご安心下さい。
青色申告特別控除が引き下げられる代わりに、令和2年分から所得税の基礎控除(誰もが絶対に差し引ける控除額)が38万円→48万円に引き上げとなります。※下の図の【改正1】
つまり、それぞれが相殺されて結局はこれまでと同じ税額となります。
※余談ですがサラリーマンの高額所得者の方がこの改正によって税金が上がる仕組みです。感謝感謝
※なお個人住民税については令和3年度分以降
電子帳簿保存と電子申告(e-tax)
そして、耳の早い方はご存知でしょうか、2020年度(令和2年)分から電子帳簿保存もしくは電子申告(e-tax)のどちらかの要件を満たしていれば、青色申告特別控除が55万円ではなくこれまでと同様の65万円の控除が受けられます。
つまり、先にお伝えしたように電子帳簿保存もしくは電子申告(e-Tax)が出来なくて、青色申告特別控除が55万円に下がったとしても、控除の総額で考えると従来と同じになるので、控除額が減るというわけではありません。
逆に、電子帳簿保存もしくは電子申告(e-Tax)が出来ていれば、基礎控除が上がった10万円分は得するということになります。※下の図の【改正2】
先ほどと同じように、税率がざっくり20%だとしたら2万円の手取りが増える事になります。
わざわざ税務署に行かなくても提出が可能なのは忙しい農家さんにとっては凄く助かる事ですよね!
僕もやったことないので、一緒にこれからチャレンジしてきましょう!
2019年度分の確定申告をe-Taxでやってみました!(結構簡単でした)
実際にどんな感じだったか詳しく別の記事にまとめてみたのでよければ合わせてご覧下さい。
※また経費や控除などについてもっと詳しく知りたいという方はこちらの記事をご参考にされてみて下さい↓
農家の青色申告のやり方
青色申告をするのにメリットがあるのは分かったけど、これを記帳とかきちんとやるのって面倒くさそうだな・・・と思われるかもしれませんが、最近では使いやすいソフトも充実していますし、どうしても難しいなら人に依頼する事も可能ですので諦めてはいけません!
自分でやる場合
農業の青色申告に対応したソフトを購入orダウンロードします。
・農業簿記
・JAのWEB農業簿記
・弥生会計
・らくらく青色申告農業版
・確定申告ソフトfreee
有名所はこの辺りでしょうか、きちんと確定申告が出来ればいいので、操作性や金額で決められてみてはいかがでしょうか。(年間1万程度~数万円くらいです。)
また、青色申告会などにも参加し税理士の先生の話を聞いたりして、分からない点を無くししっかり確定申告をされて下さい。
それと、これは人から聞いた話ですが、最近話題の確定申告ソフトfreeeは初心者にも分かりやすい言葉で表現している分、簿記を知っている人やこれまで他のソフトを使っていた人は少し使いずらいという印象だそうです。
でも、確定申告ソフトfreeeの場合は口座やクレジットカードと連携して自動で仕分してくれ、事務作業がかなり楽になるというメリットもあるので、少し検討されるのもいいかもしれませんね。
人に依頼する場合
・税理士に依頼(費用:年間12万~)
・JAの記帳サービス(費用:年間6万前後)
・商工会の記帳代行(費用:年間7万円前後)
お金は掛かりますが上記したように、青色申告やe-taxをすることによってお金が浮いた分をこちらに回しても十分元が取れるのではないでしょうか。
また、記帳くらいは自分で出来るけど、最後に数字をまとめて決算する部分は任せたいという場合は年間2~3万でも大丈夫という場合もありますので、ご自身に合った方法を選ばれてみて下さい。
それと、税理士の先生に依頼するのはやはり少し高い場合があるのですが、節税について教えてくれたり、きちんと面倒を見てくれるという方もいらっしゃるので、記帳や決算だけではなく+αの価値もあるでしょう。
売上が高いという方や時間が惜しいという方はこういったサービスを積極的に利用して、本来自分が頑張るべき所に時間を割くのは大事だと僕は思います!
新規就農やこれから青色申告を始める場合
青色申告を行う場合には、青色申告を行う年の3月15日までに青色申告承認申請書の届け出が必要です。
また、もし新規就農するのが1月16日以降だったり、期限の3月15日以降の場合は、その就農(開業する日)から2ヵ月以内に書類を提出することになります。
もちろん、この青色申告承認申請書を出していたからといって、絶対に青色申告をしないといけないという訳ではありません。
もしやっぱり今年は難しそうとなった場合は白色申告でもOKですので、これだけメリットがある制度ですのでとりあえず申請書は出しておく事にしましょう!
※この青色申告承認申請書は1度提出すれば2年目からは提出不要です。
まとめ
さて今回は農業の青色申告について解説していきました。
ポイントとして
・特別控除により税金が安くなる
・2020年度から控除額が変更になる
という事を中心にお伝えしました。
ただ、青色申告をする事によって自分達の農業経営の数字をしっかり把握できる事が一番重要な事で、その数字をもとに今後の経営の方針や改善案をしっかり考えられるというのが本来一番活用したい所だと思います。
その為にも控除などの制度をしっかり利用して青色申告をマスターしていきましょう!
では最後までお読みいただきありがとうございました!