こんにちは、農家の方に特化して家計のお悩み解決をお手伝いしています
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
農家さんの売上減少するリスクに備える為の収入保険制度がありますが、
こちらの制度は平成31年1月のスタートから既に2年が経とうとしています。
収入保険が始まる前の収入保険の講演に呼んで頂いた時や普段の面談で話を伺っていたところ、
やはり最初は様子見な農家さんも多いのかなという印象でした。
そろそろ、収入保険の加入状況や様子が見えてくる頃だろうと思って、農水省や金融公庫のサイトを覗いてみたら思ってた通り、色々と興味深いデータをまとめて出してくれていたので、
そちらのデータを参考に、今回の記事では
・収入保険の実績(加入者数、支払い金額)
・加入した理由・しなかった理由
・今後の収入保険制度
といった点を中心に簡単にご説明出来ればなと思っています。
※そもそも収入保険制度って何?という方や、どういった人が加入対象になるの?というのはこちらの記事で詳しく説明しているので、是非こちらの記事も参考にされて下さいね。
また、今日改めて農水省のHPを確認したら、
しゅうほちゃんというキャラクターがポイントを解説する動画を作成されていましたのでこちらも参考にされてみてください。
目次
収入保険の実績
では収入保険に加入している方の実績からお伝えしていきますね。
収入保険への加入者数
まずは気になる加入者数から見ていきましょう。
収入保険制度に加入できるのは青色申告をしている個人農家さんや法人に限られており、全体として約46万人(青色申告者数)が加入対象となっています。
そのうち、令和2年の収入保険の加入実績は以下のっとりとなっています。
個人・・・3万2千経営体
法人・・・3千経営体
(令和2年4月末時点)
個人と法人の合計で3万5千経営体ですので、これを全体の46万人(経営体)で割ると、
約7.5%の農家さんが収入保険制度に加入していることになります。
ざっくり、約13人に1人がこの収入保険制度に加入しているということになりますね。
ん~案外加入している人は少ないかな?という印象ですが、まだ始まったばかりの制度ですので、これからさらに増えてくるかと思います。
(※後で加入した人の意見や今後の収入保険の動向などについても少しふれていくので、まだ加入されていない方は是非ご参考にされてみて下さいね。)
余談ですが、加入しているかたの基準収入(売上高)の平均は個人で1300万円、法人で4000万円だそうです。
品種別の加入状況
収入保険に加入した農家さんを品目ごとに見ると、以下の順番となります。
1位・・・米
2位・・・野菜
3位・・・果樹
※まぁ、米農家さんは絶対数がそもそも多いのでこれはなんとも言えないデータかもしれませんが、、ただ、やはり野菜や果樹は農業共済に比べて補償が手厚いというのもあるかと思います。
(この点も後にご紹介する加入者の声をご参考にされてみてください。)
どれくらい支払っているか
保険は掛けておしまいではなく、何かあった時にきちんと損失がカバーされてこその保険です。
(もちろん、何も無いのが一番ですが(笑))
令和2年4月末までの収入保険の支払い実績は以下のようになっています。
件数:3,049件
支払い金額:72億円
驚きなのは、令和元年に加入した方で考えると加入者のうち約13.4%(約2.3万経営体)に支払いがあったとのことです。
普通なら保険として成り立たないのでは?と思うレベルですが、そもそも国がやっていることなので大丈夫なのでしょう(笑)
ただし、保険料はどんどんあがっていくでしょうから、考えている方は早めに加入して保険料の等級を下げておくのも1つの考え方かもしれませんね。
加入者の声
さて、どれくらいの方が収入保険に加入しているか分かった所で、
何故収入保険に加入したのか、また反対に収入保険に何故加入しなかったのかという点についても複数意見が書いてあったので、そちらもピックアップしてご紹介しますね。
収入保険に加入した理由
→農業共済、ナラシ対策、野菜価格安定制度とバラバラに申請していたが、収入保険は1本でいい
→農業共済の対象品目以外も含めて、すべての品目を保険でカバーできる
→農業共済よりも収入保険の方が掛け金が安く、補償内容も充実している(特に果樹共済)
→ナラシ対策は統計データを用いて収入減少を補填するが、収入保険は自分の売上を用いるので、経営実態に合った補填がされる。
→ナラシ対策は補てんに下限(標準的収入の20%の収入減少までが補填の対象)があるが、収入保険は収入がゼロになっても補填される
→価格低下だけではなく、自然災害による収入減少などにも備えられる
収入保険に加入しなかった理由
では次は加入しなかった理由をご紹介していきますね。
なお、こちらは2020年4月に日本政策金融公庫が融資先にはがきによるアンケートをまとめたレポートを参照にしております。
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_200427a.pdf
日本政策金融公庫:農業景況調査(令和2年1月調査)より
6000件以上の回答があったとのことですので、割と良いデータになっているのではないでしょうか。
(農水省には加入しなかった理由がまとめられていなかったので助かりました。)
そして加入しなかった理由がこちら
1位・・・農業共済等、国の他の補償制度を利用している(62.7%)
2位・・・収入保険制度をよく知らない(26.2%)
3位・・・自己資金で対応する(19.8%)
1位は他の制度を利用しているからというのは理由としてはまぁ当たり前かなと思いますが、実際に収入保険と補償内容や保険料などをきちんと見比べて、それでもやっぱり農業共済や国の他の制度の方が良いと感じた人はどれくらいいるかが重要ですよね。
正直内容はわからんけどもう入っているから今のままでいいやという人は、第2位の収入保険制度をよく知らないという人とほぼ同じなのではないかと思います。
これから加入を検討される方は先にご紹介した加入した人の意見も是非参考にしながら、きちんと比べて検討されてみて下さいね!
令和3年からの収入保険
いつまでに加入の手続きが必要?
この記事を読んで収入保険に興味を持ったり、加入しようかなと思って頂けたのであれば凄く嬉しく思う限りです。
収入保険制度は1月~12月が保険期間となっており(個人の場合)、加入する保険期間の前年の12月までに加入申請と保険料の納付を行う必要があります。
検討する期間なども考えたら夏の繁忙期が終わったらすぐに検討を始められるとようのではないでしょうか。
令和3年以降の変更点
当分の間の特例として、野菜価格安定制度の利用者が初めて収入保険に加入する場合、収入保険と野菜価格安定制度を同時利用(1年間)することが出来るようになるとのことです。
これは背景に野菜価格安定制度の脱退手続き等が煩雑であることがあるからだそうです。
(この兼ね合いはなかなか面倒くさいようですね。)
また、令和4年から加入申請手続きのオンライン化を検討しているようです。
これはデジタル移行している今の世の中から考えて当然なのでしょうね。
(むしろ出来なかったのかとちょっと驚きでしたが、、笑)
まとめ
さて、今回はH31年にスタートした収入保険制度の実績についてご紹介しました。
実際にこれくらいの人が加入しているのかと数字で分かることや、加入した人の声なんかはとても参考になるのではないでしょうか。
保険というのは自分では賄いきれない経済的損失をカバーしてくれるものです。
滅多に起きない、でも可能性は0ではないというリスクに対して保険を掛けて備えておくのは、万が一の場合の経済的損失もそうですが、日々の農業に安心して集中できる(=生産性UP)ことに繋がります。
ぜひ、この収入保険制度を上手に利用されて下さいね!
では、今回も最後までお読み頂きありがとうございました!