こんにちは、農家の方に特化して
家計のお悩み解決をお手伝いしています。
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
今回は個人農家さんの節税についてまとめてみました!
ある程度は網羅しているかと思いますので、再確認やチェックで読まれてみて下さい!
目次
常にやりたい節税
ここで紹介するのは、日ごろから常に意識しておきたい節税の分になります。
きちんと経費を積み上げる
節税というよりも、税金を少なくする一番の方法は、経費をきちんと積み上げることです。
自分がこれは経費にならないだろー、と思っているものも意外と経費になるのも多かったりするので、経費は一つ残らず積み上げていくようにしましょう。
ただ、一つ注意が必要なのが、経費として沢山落とすと考えると、「あれも、これも経費♪」というように、無駄な支出が増えてしまう可能性もあります。
家計でも経営でもお金を残す一番の方法は使わない事です。
農家さんは特に交際費として経費になることも多いでしょうから、無駄にお金を使ってしまわないように注意しましょう。
この経費については詳しくはこちらの記事に書いています!
控除を上手に利用する
控除というのは所得や税金を特別に減らしていいですよという制度です。
それにより、支払う税金も少なくなり節税ができます。
基本的には対象となる控除を確定申告の際にきちんと計算するというだけなので、先ほどの経費と同じように、節税というよりも当然の権利としてをきちんと使うことが大事という事です。
確定申告での控除についてはこちらの記事に詳しく書いています。
青色申告
確定申告は白色と青色と呼ばれる2つの申告の方法があります。
ほとんどの方がご存知だと思いますが、白色申告は簡単な記帳だけで申告できる分、税の優遇措置などがほとんどありません。
それに対して青色申告の場合は、複式簿記での記帳などしっかりと申告する必要があり、白色と比べると手間は掛かりますが、その分税金に対して優遇があります。
今では会計ソフトやクラウド型の会計システムを使えば、かなり簡単に青色申告が出来るようになっています。
節税になるのももちろんですが、お金の流れをしっかり把握できて事業の見直しにも役経つので、個人事業主の農家さんは絶対にやっておきましょう。
青色申告での税の優遇措置を以下に簡単にまとめておきますね。
青色申告特別控除
青色申告の一番のメリットと言ってもいいでしょう。
きちんと青色申告をするだけで、65万円を所得から差し引くことができます。
1円も使わずに65万円が経費に出来るわけです。
注意点
2020年度分(令和2年度)からは
65万円 → 55万円に引き下げられます。
しかし、電子帳簿保存もしくは電子申告(e-tax)のどちらかの要件を満たしていればそのまま65万円の控除が受けられます。
※ちなみに、平成32 年分から所得税、平成33 年度分以降の個人住民税については、基礎控除が38万円→48万円に引き上げとなります。
仮に電子帳簿保存もしくは電子申告(e-tax)が出来ずに、青色申告特別控除が55万円になったとしても、控除の総額で考えると従来と同じになるので、控除額が減るというわけではありません。
逆に、電子帳簿保存もしくは電子申告(e-tax)が出来ていれば、基礎控除が上がった10万円分は得するということになります。
少しややこしいそうですが、所得税と住民税、国民健康保険料が安くなり、年間数万円は節税になるので、この辺は詳しく調べてまた別の記事で詳しく書きたいと思います!
早く知りたい!という方はこちらの国税庁が出しているPDFがわかりやすかったですのでご参考にされてみて下さい。
専従者控除
奥様と一緒に農業を営んでいるといて、奥様に給料を渡しているという場合には、白色申告の場合は86万円を事業主の所得から差し引くことができて、事業主の所得税や住民税、国民健康保険料が安くなります。
これが、青色申告をしている場合は奥様に支払った給料の全額が経費に認められ、その分事業主の所得を減らすことができ税金や国民健康保険料を白色申告の場合よりも、さらに減らすことができます。
(もちろん、その分きちんと働いているという実態や、青色申告者給与に関する届け出書に記載した範囲になります。)
確定申告にあまりなじみの無い新規就農者の方や、この辺りが少し苦手な方はもしかすると
「いや、奥さんがその分税金払うんだから節税にならないんじゃない?」
と疑問に思うかもしれませんね。
そこが、日本の税金や控除の少しややこしい所で、奥さんは受け取った給料にまるまる税金が掛かってくるというわけではなく
・基礎控除(38万円)
・給与所得控除(65万円~)
という2つの控除を受け取った所得から差し引くことができます。
この2つを足し合わせると103万円となりますが、この数字は1度は聞かれたことがあるでしょう。
103万円以下の場合は所得税は掛からず(住民税は少し掛かります)、まるまる手取りになります。
事業主は経費に落とせるので、家計全体(事業主の所得+奥さんの所得)としては手取りの金額は高くなるというわけです。
この専従者給与を上手に利用すれば、かなり節税することができます。
ただ、所得がかなり高い場合は103万円と言わずに、税金が掛かっても奥様の給与を103万円以上渡す方が全体の税金が安くなるという事もありますので、
気になる場合は税務署などで計算して貰うといいでしょう。
この辺りの話はまた機会があれば、詳しく記事にしたいと思います。
とりあえず、ここに書いている概要だけでも抑えて下さいね。
繰り越し控除
新規就農した直後の年や、天候などの影響でその年の所得が赤字になった時に、白色申告の場合はその赤字は翌年以降に繰り越せず切り捨てなければなりませんが、
青色申告の場合は翌3年間はその赤字を繰り越すことができ、翌3年間で出た黒字(利益)と相殺できます。
利益(所得)が減るという事は税金が安くなるという事ですので節税になります。
なんとなくイメージはできるかもしれませんが、実際に簡単にシミュレーションしてみましょう。
例えば所得が
1年目に-200万円
2年目に50万円
3年目に100万円
になったとします。
※2、3年目は青色申告控除適用した後の所得とします。
白色申告の場合は1年目の赤字200万円は繰り越すことが出来ませんでしたね。
ですので、2年目は50万円が課税所得になり、3年目は100万円に税金が掛かります。
それに対して、青色申告の場合は1年目の赤字が3年間繰り越せるので
2年目に50万円を相殺、3年目に100万円を相殺すると、それぞれの年の所得が無くなります。
つまり、税金が掛けられる所得が無くなるので、白色申告の場合に比べ大幅な節税が出来ることになります。
特に農業を始めたばかりの方は、経費ばかりが掛かってこの純損失が出ることも多いでしょうから、最初の年から必ず青色申告をしておくようにしましょう。
※青色申告をする場合は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に農業を始める場合は、その事業開始等の日から2月以内。)に提出する必要があります。
詳しくはこちらを参考にされて下さい。↓
少額減価償却資産の特例
通常10万円を超える農業経営に関する、機械や備品というのは固定資産に計上し減価償却(決められた年数で経費に落とす)していくことになっていますが、
青色申告をしている場合は、30万円未満のものはその年に一括して経費に落とすのを選択できるようになります。
つまり、10万円以上、30万円未満の農業に関する機械や備品を買った年の所得が高い場合は、一括して経費に落とすことが可能になるので節税になるという事です。
仮に、購入した年の所得があまり高くならないようであれば、固定資産として計上して通常通り減価償却していけばいいだけです。
もしくは、所得が高かったなーという年の年末などに必要なものは購入して1つ30万円未満のものは一括で経費に落とすという事もできます。
(もちろん、本当に必要な分だけ買いましょう!笑 結局は使わないのが一番お金は残ります。)
この特例は年間で300万円まで(税込み)利用できるので、是非上手に活用されるようにして下さいね。
収入が増えた年にやりたい
ここからは、収入が増えた年にやっておきたい節税対策になります。
特に効果が高いものを2つだけご紹介します。
国民年金2年前納
案外ご存知無い方も多いのですが、皆さんが支払われている国民年金でも実はかなり節税ができます。
なんと払い方1つで10万円も税金が変わることもあります。
詳しくはこちらの記事に詳しく書いてますので、絶対に一度はチェックされて下さいね。
小規模企業共済の前納を利用
小規模企業共済って聞かれたことはありますか?
本来この小規模企業共済というのは、読んで字のごとく小規模で事業を営む事業主などが加入できる制度で、事業主の退職金を準備するという目的の制度です。
小規模企業共済の基本的な仕組みについても、以前記事にまとめているのでそちらをお読みください。
この小規模企業共済共済はその年に支払った全額が所得控除になるのですが、
翌年分をまとめて支払える【前納】という仕組みがあります。
しかも、事業年度ギリギリの12月でも手続きが可能ですので、今年は儲かったから節税したいなという時でもガッツリ節税ができます。
もちろん、少し注意点などもあったりするので、詳しい手続きの方法などについてはまた別の記事で書きたいと思います。
今回はポイントだけご紹介しておきますね。
・新規加入の場合も12月の手続きで間に合う
・その場合は11カ月分(翌年の1月~11月)前納がおススメ
(翌年の12月分まで払ってしまうと、翌年は前納での控除ができない為)
・1カ月の掛け金が最大7万円なので84万円が所得から差し引ける。
(今年12月分+翌年1月~11月分の12カ月分)
・既に小規模企業共済に加入しており、毎月支払っている場合でも前納可能。その場合はその年に最大161万円まで控除できる。
(毎月1~12月分+翌年の1~11カ月分)
・一度加入した後は減額も可能(最低1000円/月)
・万が一お金が必要な時には契約者貸付けで借り入れを受けられる
(金利も0.9~1.5程度なので低く、融資と違って手続き後に早く受け取ることができる。)
こういった有利な点があるので、特に今年は儲かった!という時にはぜひ検討したい節税の手段になります。
家計に余裕がある場合は
もうこんなの当たり前のようにやってるよ!という人で、家計に余裕がある場合には
先ほどの記事の最後にも少し書いていますが、掛け金を全額控除して節税しながら、お金まで増やすことができる
農業者年金や小規模企業共済、国民年金基金、確定拠出年金を利用される事をおススメします。
これらの特徴は支払った保険料を全額所得から控除できる上に、一定の期間や条件を満たすと将来元本より多く戻ってくるという優れた制度です。
詳しくはこちらの記事をご参考にされて下さい。
その他覚えておきたい節税
その他該当する人は利用できる節税をご紹介します。
住宅ローン控除
これは住宅を購入されている方はもちろんご存知でしょうけど、10年以上の住宅ローンを組み自宅を購入やリフォームされた場合は、
その年の年末のローン残高の1%が税額控除となります。(最大40万円)
この税額控除というのがポイントで、これまでにお伝えした所得控除とは異なりダイレクトに税金が安くなります。
簡単に言えば
住宅ローンを利用し自宅を購入した年末に2,000万円住宅ローンが残っていたら、その1%である20万円が支払うべき所得税から差し引かれることになります。
(所得税から差し引ききれない分は住民税からも控除できます。)
住宅を購入した方や検討している方はこういった点も考慮したお金の流れを考えたい所ですね。
現在はこの控除を受けられるのは10年間ですが、増税後は13年に延びる予定です。
国民年金保険料免除
これは節税とは少し違いますが、新規就農したばかりの時期や大不作で収入が激減して家計が苦しいという時には、国民年金の保険料を全額もしくは一部免除してくれる仕組みがあります。
お金が無いから未納(単純に払わない)するのではなく、こういった制度を上手に利用しましょう。
ちなみに全額免除や一部免除した時の、将来の年金はもちろん減りますが、免除された割合よりも多く受け取れるちょっとお得(?)な制度です。
少しややこしいので、詳しくは以前書いた記事を参考にされて下さい↓
国民健康保険
保険料の減免
収入金額が一定額以下、もしくは天災などの特別な事情がある場合には、国民健康保険料も減額されることがあります。
ただ、これは自分から申請や手続きをする必要があるので、先ほどの国民年金と合わせて役所の窓口に相談しましょう。
世帯合併と分離
国民健康保険は世帯毎に保険料の上限が決められています。
家族経営などで親と同居している農家の方は世帯を一緒にする事で、国民健康保険料の上限という仕組みを利用して保険料を抑える事ができます。
親と同居していて、世帯は分けており国民健康保険料はそれぞれ支払っているという場合には、世帯合併も一度検討されてみて下さい。
※もちろん国保も社会保険料控除となるので、世帯で収入が高い人が控除するようにしましょう!
ただ、注意したいのは同居の家族が、介護保険を利用している場合は、世帯全体の収入でサービスの負担限度額が決められるので、
世帯を一緒にしている方が「国民健康保険料+介護の負担額」のトータルでは高くなってしまうという場合があります。
詳しくはこちら↓の記事に書いているので、同居の家族に介護保険を利用されている方がいる場合は
ぜひ一度チェックされてみて下さいね。
雪下ろし費用の雑損控除
雑損控除とは災害や盗難で被害を受けた場合には、確定申告で一定の金額を所得控除できるのですが、
実は雪下ろしもこの雑損控除の適用の範囲となります。
雪の多い地域で農業をされる農家の方も多いと思いますので、無い事が一番ですがこういったのも控除できるというのを覚えておきましょう。
雪下ろしのどんな費用が控除になるの?という方はこちらのリンク先に詳しく書いてありますので、是非ご覧下さい!
(運営者の方ありがとうございます。)
まとめ
個人農家さんの節税についてまとめさせて頂きました。
細かい点や農業経営における節税(固定資産台帳、機械の売却、中小企業経営強化税制など)については触れていませんが、
特に抑えておきたい節税やポイントは網羅できているかと思います。
税金の計算や詳細が知りたい方は、まずはお近くの税務署に相談されてみて下さい。
今回参考にさせて頂いた資料はこちらです。
(発刊が古いものもあるので、ご自身で参考にされる場合は税制の改正などに注意されて下さい。)
参考文献
・新 農家の税金(第16版) 鈴木武氏、林田雅夫氏、高久悟氏著
・新 農家の青色申告 小沢禎一郎氏著
・現代農業 2018年3月号 農文協発刊
・現代農業 2018年7月号 農文協発刊
・フリーランス・個人事業の絶対トクする!経費と節税 福島宏和氏著
・読めば必ず得する税金の話 さんきゅう倉田氏著
最後に、ここ間違えているよとか、この節税方法や注意点は載せとかなくちゃ~!
という事がございましたら、お問合せやコメントでご指摘頂けると幸いです。
では、最後までお読み頂きありがとうございました!