こんにちは、農家の方に特化して
家計のお悩み解決をお手伝いしています
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
農家の皆さんなら一度は「節税」について考えたことがあるかと思います。
青色申告や専従者給与など有名なのはありますが、今回はちょっと変わった(?)節税の方法をお伝えしたいと思います。
皆さん国民年金の保険料は支払われているかと思いますが、
この国民年金保険料って実は払い方1つで、かなり節税ができてお得になるんです!
早速、その賢い年金の払い方を3つご紹介していきたいと思います!
目次
所得が高い人に社会保険料控除を適用
これは、基本中の基本なので、ご存知の方も多いかもしれませんが
国民年金の為に支払った保険料は「社会保険料控除」といって
その全額が支払った人の所得から差し引くことができます。
ここまでは、確定申告をしていれば当たり前の話ですが、
実は、この社会保険料控除って自分の分だけでなく、自分と一緒に暮らしている家族の分を
代わりに自分が支払った場合は、自分の所得から差し引くことができるという仕組みがあります。
※詳しい定義は参考までにこちらに載せておきます。
納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。これを社会保険料控除といいます。
控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。
例えば
夫婦で自営業で農業をしている場合は、国民年金保険料は夫婦それぞれの分を支払わなくてはいけません。
(脱サラして就農する方は自営業者の社会保険には扶養という概念が無いと覚えてて下さいね。)
この時に、ご主人は課税所得者で、奥様は非課税所得者だったとしたら
奥様の所得からいくら社会保険料を控除しても、1円も税金は安くなりませんが
奥様の分をご主人の所得から差し引いた場合は、ご主人の課税の対象となる所得が下がり
その分、税金が安くなり「節税」になるという事です。
実際にどれくらい違うかというと、ざっくりですが
ご主人の所得に
・所得税 5%
・住民税 10%
合計15%の税率が掛かっていたとします。
1カ月の国民年金保険料は16,400円(H31年度分)、奥様が1年間で支払う国民年金の保険料は、その 12ヵ月分なので、19万6,800円となります。
※まとめ払いでも安くなりますので、後で詳しくお伝えします。
それをご主人が保険料を負担し、ご主人の所得から差し引いた(控除)場合は
先ほどの所得税と住民税がこの19万6,800円分掛からないので
19万6,800円 × 15% =2万9,520円となり
2万9,520円が節税できるという事になります。
これが社会保険料控除の上手な使い方になります。
ご主人が事業主で、奥様が青色申告専従者のパターンではよくありますので是非活用されて下さい。
他には「農業者年金」なども同じ社会保険料控除になるので、もし加入されている方は同じ要領で節税しましょう!
※所得が高い方が本当に支払ったという事実が必要となりますので、国民年金も農業者年金も
夫婦それぞれのクレカや口座から引き落とされていると、税務署からダメって言われることもありますので、
引き落としでやる場合は所得が高い人の口座にまとめるようにしましょう!
前納で保険料をさらにお得に
さて、今度は少し家計に余裕がある場合には絶対にやっておきたい
国民年金保険料の「賢い納付方法」をお伝えしたいと思います。
先ほど、1カ月の国民年金保険料は16,400円とお伝えしましたが、実は国民年金保険料には前納といって
・2年分
・1年分
・6カ月分
をまとめて支払うことで保険料が割引になる制度があります。
厳密に言えば他にも当月末振替などありますが、今回特に抑えておきたいものだけお伝えしています。
国民年金保険料の納付方法
納付方法によっても割引率が変わるので、先に国民年金保険料の納付方法を整理します。
納付方法は以下の3つです。
・口座振替
・クレジットカード払い
・現金払い
前納による割引率
まとめて支払った場合の割引率はこちらです。
(クレカと現金は同じ割引率ですので合わせています)
2年前納となると約1カ月分の保険料が節約できますね。
これだけ見ると口座振替の2年前納が一番割引は高いですが、クレジットカードの場合はポイントが付くので、実際にはクレジットカードの方が一番お得でしょう。
ただし、先ほどの社会保険料控除の分でも書きましたが、所得が高い人から差し引こうと考えている場合は、その対象者のクレジットカードで引き落としをする事になります。
※後程詳しく説明しますが、前納する場合は手続きの期限が決まっています。
社会保険料控除×前納を組み合わせる
ここまでで、国民年金保険料の支払い方次第で、かなり節税や節約が出来るという事はおわかりになったかと思います。
では、最終ステップです。
この2つを最大限利用する節税の方法をお伝えしますね。
収入が多い年に2年前納して社会保険料控除に
考え方は凄く簡単です。
国民年金保険料は支払った年の所得から社会保険料控除で差し引けますが、
実は2年前納した場合の保険料というのは
・納めた年に全額控除する方法
・各年分の保険料に相当する額を各年において控除する
という2つの方法が選択できます。
※2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除について|国税庁より
つまり、収入が多い年(所得が多い)に2年前納で支払った分を社会保険料控除として全額控除すると、大きく節税することができます。
(もちろん非課税の奥様がいる場合は合わせて)
自営業者の年収というのは、一定ではなくその年によって波はありますが、
特に農家さんの場合は天候などの影響で、所得が多い年と少ない年の波が多いのではないでしょうか。
所得が少ない年に、事業主も青色申告特別控除(65万)や基礎控除(38万)などの範囲で済む場合は
所得税や翌年の住民税が非課税となるので、社会保険料控除による節税はできません。
できるだけ所得が高い年にまとめて控除した方がいいという事になります。
では、実際にどれくらい違うのかシミレーションしてみましょう!
節税シミレーション
夫婦2人で農業をやっていて、青色申告の特例で奥様に専従者給与を非課税の範囲で支払っていたとします。
事業主であるご主人の課税所得が
1年目は100万円
2年目は 0万円
となる場合を想定します。
※課税所得とは簡単に言えば、農業所得から青色申告特別控除(65万)や、基礎控除(38万)やその他控除となる金額を差し引いた、最終的に税金が計算される元になる金額のことです。
今回はわかりやすく課税所得と社会保険料控除を分けていますが、実際の計算の順序は異なります。
通常パターン
では、それぞれ夫婦の国民年金保険料を通常通り、毎年支払った場合のシミュレーションがこちら↓
1年目は所得が高かったので、ご主人は課税所得から社会保険料控除を差し引くことができて2万9,538円が節税できます。
しかし、奥様はもちろん非課税(=所得0円)ですので、いくら控除しても税金は安くなりません。
そして、2年目は仮に収穫や販売があまり上手くいかずに、所得が下がったとして、事業主も課税される所得が無いとなると、社会保険料控除で安くなる税金は無いので節税額は0円となります。
この通常の場合は、2年間の合計で2万9,538円を国民年金保険料の社会保険料控除で節税ができるという事になります。
2年前納パターン
では次は、先ほどと課税所得の部分は同じ条件ですが
保険料の支払い方法を
①奥様の分を事業主が社会保険料控除する
②国民年金保険料を2年前納する
という条件にします。
その場合のシミュレーションはこちら↓
1年目の事業主にだけ社会保険料控除が一気に集中したことで、その年は11万3,892円の節税となります。
2年目に社会保険料控除は使えないので、節税額の合計は11万3,892円となります。
2つのパターンを比較
最初の通常パターンの節税額は2万9,538円
次の2年前納パターンの節税額は11万3,892円
その差額は8万4,354円となります。
所得が高い人に社会保険料控除をまとめ、
所得が高い年に一気に控除をすることで
2年間でこんなにも差がつくことになります。
しかも、忘れてはいけないのは前納した場合は保険料自体が割引がありましたよね。
口座振替の場合で2年前納した場合は15,760円保険料が安くなるので
先ほどの節税額の差に足し合わせると、合計で10万114円の差になります。
(クレカ・現金の場合は 14,520円の割引なので合計9万8,874円の差になります)
このように、国民年金保険料の支払い方を上手に工夫するだけで、たった2年間で約10万円も節税する事ができます。
国民年金保険はどうせ払わないといけないものですので、このように上手に活用した方が絶対にいいですよね。
前納する上での注意点
これだけ節税に有利な制度ですので、余裕がある人は是非チャレンジして貰いたいのですが、多少の注意点や知っておいた方がよい情報もあるので簡単に説明しますね。
手続きの期限
2年前納する場合は事前にお近くの年金事務所等で手続きをする必要があります。
支払い方法により、それぞれ手続きの期限が異なります。
口座振替とクレジットカードの場合・・・2月末まで
現金納付の場合・・・4月中(5月7日までに納付が必要)
※1年前納や半年前納の場合はまた異なりますので、こちらの日本年金機構のHPを参考にされて下さい。
前納した年の所得が低い場合
今年は儲かったから前納しとくか!
というように年度末に決めることができれば一番わかりやすいのですが、先に説明したように、前納にはそれぞれ払い方によって手続きの期限があります。
ですので、まとめて前納した年が課税所得が高い場合なら、その年に全額社会保険料控除すればいいのですが、
もし、その年に思ったように所得が上がらなかった(シミュレーションの2年目の状態)場合には
全額を社会保険料控除しても差し引けない余りの分が出て勿体ないことになります。
そんな場合はどうすればいいかと言うと、最初の方で少し説明しましたが
2年前納した場合「各年分の保険料に相当する額を各年において控除する」が可能でしたね。
※2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除について|国税庁より
要は前納してたけど、社会保険料控除として落とすのは1年毎にやりますよ。という事です。
控除するかしないかは、確定申告の時に決められますので、
まとめて1年で控除するか、
それぞれの年に分けて控除するかは
確定申告の時に決めるようにしましょう。
※2年前納した分をそれぞれに分ける場合は、3年にわたり控除していくことになります。
詳細はこちらをご参考にされて下さい↓
2年前納した保険料の社会保険料控除はどのような方法で行うのか。|日本年金機構
最低でも2年分のお金の流れを把握する
2年前納で大きく節税できますが、その分まとまった金額が家計から出ていくことになります。
途中でお金が必要になったから先払いしていた保険料を返してくれ!と言っても返ってきませんので、
最低でも、2年後くらいまでのお金の流れ(キャッシュフロー)は把握するようにしましょう。
夫婦の分を交互に2年前納
夫婦2人分で70万円もまとまった金額は払えないけど、2年前納をして1カ月分の保険料節約はしたいという場合には、
夫婦で前納するタイミングを1年ずらせば、2年の前納の割引のメリットは受けられる上に、国民年金保険料の負担は実質1年分を支払うことになります。
社会保険料控除のタイミングなどが少し複雑になりますが、負担する金額は1年分なのでおススメの方法です。
※ただし、どうしても最初の切り替え時には3年分を支払う必要があります。
まとめ
今回の記事はいつもよりちょっと長かったですね(笑)
お疲れ様でした、ここまで読んで頂きありがとうございました。
節税はどうしても説明すると長くなってしまうんですよね(汗)
ただ言ってることは
①国民年金保険料は所得の高い人に集中させる
②余裕があれば2年前納すると割引になる
③所得が高い年に社会保険料控除できればもっと節税になる
という3点ですので、1度理解してしまえば特に難しいことはありません。
是非この機会にチャレンジしてみられて下さいね!
おまけ
節税というわけではありませんが、農家さんのような自営業者が絶対にやっておきたい「付加年金」という制度があります。
これは「毎月400円」の保険料を支払っていくと、将来「200円 × 支払った月数」を受け取ることができます。
簡単に言えば2年で元が取れる年金となっています。
以前この付加年金についても記事にしてますので
よかったらこちらをご参考にされて下さい!
やっていて絶対に損はない制度ですので、まだやられていない場合は是非検討されてみて下さい!
では、最後までお読み頂きありがとうございました!
何かあればお気軽にお問合せからご質問して下さい(^^)/