こんにちは、農家の方に特化して家計のお悩み解決をお手伝いしています
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
〇〇農家の平均年収ってどれくらいなの?
これは、これから新規就農する方は就農して作る作物を選ぶ際の参考にしたり、既に農業をされている方でも作る作物を変えようと思っている方は気になる所だと思います。
実際、その地域に集中した作物であればある程度の農家さんの年収というのはJAに卸していれば、なんとなく想像が出来るかもしれません。
しかし、そうではない場合はどれくらいなんだろうかというのはいまいちピンと来ないかもしれませんね。
そこで!今回は農水省のデータから読み取った農家さんの経営体別の平均年収をまとめてみました!
さらに、後半では実際に僕の方に普段ご相談される方の年収などについてだったり、じゃあ実際どれくらいの収入があればやっていけるのかという他では書かれていないような話も少しさせて頂きますね。
目次
一般的な農家の年収
さて、早速ですがまずは全国農家さんの一般的な平均年収を見ていきましょう!
今回参考にするのはこちらの農水省が出しているH30年「営農類型別経営統計(個別経営)」というデータでご紹介していきますね!
平成30年の個別経営体(全国平均)の1経営体当たりの農業粗収益は626万円となった。
一方、農業経営費は452万円となった。
この結果、農業所得は174万円となった。
また、H29年とH30年を比べると農業の粗収益は626万→623万に増えていますが、それ以上に農業経営費が増えているので、結果的には農家さんの農業所得の全体の平均は下がっているということになります。
これは、農業経営費のうち農業雇用労賃が+15.1%、光熱動力費が+10.8%と上昇したことなどが原因で、農業所得が減少したと言われています。
作物毎の年収
とはいえ、上記の分はあくまで全体的な数値ですので、ではここからは作物毎の年収を見ていきましょう!
※こちらも先ほどのH30年の「営農類型別経営統計(個別経営)」をもとにしています。
※畜産関係は基本的に守備範囲外ですので、申し訳ございませんが今回は外しています。
水田作経営
粗収益:約265万円
経営費:約209万円
差引所得:約56万円
水田作経営にいてはH29年と比べると粗収益が減っている上に、経営費が上昇しており、結果的に前年度から▲20.1%という数字となっています。特に作業受託料や高熱動力費が上昇しています。
畑作経営
畑作においては下のデータを見て頂ければわかると思いますが、北海道の収益においては全国平均との差が大きいので、北海道以外と北海道の分どちらも掲載しております。
都府県別の平均(北海道以外)
粗収益:約508万円
経営費:約355万円
差引所得:約153万円
北海道の平均
粗収益:約3,664万円
経営費:約2,456万円
差引所得:約1208万円
他県の平均との差が約8倍と北海道凄すぎです笑
畑作経営についても、農業所得が前年度と比べ北海道でも全国でも下がっており、その要因としてはやはりこちらも農業雇用労賃や光熱動力費、支払い地代、農用自動車代などが上昇しているためです。
露地野菜作経営
こちらは野菜を作る農家さんの中でも、露地での野菜をメインにされている方の数字になります。
粗収益:約640万円
経営費:約396万円
所得 :約244万円
露地野菜は前年に比べて所得は上昇していました。
収益の内訳をみてみると果菜類や根菜類が前年に比べ10%以上の収益増となっていました。
施設野菜作経営
ハウスなどを建てて施設栽培をメインに行う農家さんのデータです。
粗収益:約1,292万円
経営費: 約784万円
所得 : 約508万円
施設野菜農家の場合は農業雇用労賃や光熱動力費は水田や畑作と同じように前年に比べ上がっています。
しかし、その分収入も増えているのでそれを加味しても前年とほぼ同じ所得となっていました。
果樹作経営
果物などをメインに生産する農家さんのデータになります。
粗収益:約642万円
経営費:約388万円
所得 :約254万円
果樹農家といっても、りんごやみかん、ぶどう、なし、ももなど様々ありますが、ほとんどの作物で収益や所得は前年に比べ増えているようです。
※とくにりんごと温州みかんは10%以上の上昇
経費も農業雇用労賃など他と同じように全体的に上がっていますが、それを上回る収益増のようですね。
農家さんの家計相談からみる収入
さて、これまでは農水省のデータを元に農家さんの年収について触れてきましたが、ここからは僕の方にご相談のあった農家さんの収入実態について少し書きたいと思います。
農水省のデータと比べてどうか
僕は基本的に全国の農家さんのご相談を受けていますが、お問い合わせやご相談時には多くの場合、「〇〇農家なのですが」という所まで教えて下さったり、こちらでも伺うようにしています。
収入の分布については100万円~1000万オーバーの農家さんなど様々いらっしゃいましたが、
こうやって今回の記事で農水省のデータをまとめていて思ったのは、案外その通りだなと思いました!
もちろん、就農からの年数などで多少のばらつきはあるものの、今回ご紹介した作物や経営体の分類の平均収益(所得)の±100万とかに結構収まってるような気がします。
ですので、全くこれからという方の場合は農水省のデータを少し参考にされてみてもいいかもしれませんね。
※ただし、これはあくまでメインでその経営体でやっているだけで、詳しい内訳をみると複合経営などをされていているようです。詳細は農水省のエクセルのデータを参考にされてみて下さいね。
いくらあれば農家としてやっていけるのか
さて、最後は新規就農さんが一番悩む所である、自分の家計においていくら収入があればいいのかという問題について少し書きたいと思います。
ぶっちゃけFPからすれば、それぞれの家計で変わるので一概に言えないというのが正直な所ですが、今回はそんな事言わずにこれまで農家さんの家計相談を受けて感じたことなど少しお伝えしたいと思います。
(ただ、前提としてはあくまで最終的には人それぞれというのは年頭に置いといて下さね。)
アグリナビさんのアンケート結果
その前に、アグリナビさんという農業の求人サイトに掲載されていたアンケート結果を見つけたので、ご紹介しておきますね。
こちらのサイトで実施されたアンケートで、
『農業でどのくらいの収入をえているか年収ベースでお答えください。』という内容の質問に対して、
一番多かった年収は300万円という回答だったそうです。その次は200万や400万円という回答だったとのこと。
日本人の平均収入が約400万ちょっとと言われているので、何となくそれくらいかなと腑に落ちる結果ではないでしょうか。
FPとしての考え
僕としても農家さんは日常の支出がサラリーマン家庭と比べて少ないので、30、40代の農家さんが万が一の時の為の貯蓄や、教育費などを貯めながら一般的な暮らしをしていくのには、やはり最低300万円(世帯年収)は必要になるかと思います。
ただ、これまで沢山ライフプランを作ってきて思うのは、世帯年収300万円では正直どこかに無理が出てくる事が多かったです。
現役時代の支出を削り生活は出来ているけど、老後への自助による備えがずっと後回しになったりしています。
そうなってくると普段の生活は出来ているけど、将来のことを考えると不安になるという事もあるでしょう。
もちろん、農家さんの場合は定年が無いので長く働くというのも1つの手段ですが、僕へのご相談の中でご主人が働けなくなったのですがどうすれば・・・というご相談も実際にあったりしますので、この点についてはよく考える必要がありますね。
(その場合は持っている資産などを今度どうしていかというので解決していく事になりますが、限度と言うモノも正直あります)
また、サラリーマンには厚生年金や健康保険において扶養(奥さんの分の保険料を負担しなくていい)という特権があるので、世帯年収が300万円とかでも節約してやっていけて老後の最低限の収入も確保出来ているという事もあるかもしれません。
ですが、農家さんの場合はその300万円の中から、ご主人と奥さんのそれぞれの社会保険料を負担しただけではなく、農業者年金などに加入する場合は額面上サラリーマンと同じ年収だったとしても、実際の可処分所得は目減りしている事に気が付きます。
ですので、300万円という年収では心もとないという理由になり、世帯年収として400万円程あると、贅沢しなければある程度余裕を持ちながらずっと安心の家計が作れると思います。
まとめ
今回は農水省のデータや僕がこれまで相談に乗って来た上で感じた、農家さんの年収について書いてきました。
何度も書いていますが大事なのは『自分達の場合ではどうか』という事が一番です。
子供にいくら教育費が掛かるのか、自分はいくら年金が貰えるのかしっかり把握して、自分達にピッタリの家計を作られて下さいね。
農家の年収についての記事は、農水省のデータが毎年12月頃に更新されるみたいですので、年に1度更新していけたらいいなと思っています!
では、今回も最後までお読み頂きありがとうございました!