こんにちは、新規就農者のお金の問題を解決する
お手伝いをしています農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です。
今回のテーマは退職金ですが
これから新規就農する方もご存知のとおり
農家(自営業)には退職金というものは
存在しません。
一般的には退職金は老後資金等に
よくあてられます。
農家は老後資金の準備としては
何もしていなければ
基本的には国民年金しかありません。
ですので、理想の老後生活を過ごす為には
老後資金を現役の時から準備しなくてはなりません
その準備方法は他の記事に詳しく書いてある
のでこちらをご覧ください。
今回はその中の小規模企業共済について
詳しく書いていきたいと思います!
目次
小規模企業共済制度とは?
この小規模企業共済は個人事業主などの
小規模企業の経営者が、廃業や退職時の生活資金等のために
積み立てる制度となっており
独立行政法人である中小企業基盤整備機構が運営している制度
になります。
つまり、簡単に言うと
個人経営者(農家)も退職金準備しましょう!
という趣旨の制度になります。
最初にも書きましたが農家には
退職金が存在しません。
ですので、こういった制度を利用し退職金の準備
つまり老後資金の準備に役立てていく必要があります。
わざわざこんな制度を利用しないで
普通に貯めていくだけじゃダメなの?
こんな疑問が生まれるかもしれませんが
もちろん普通に貯めていくよりも
大きなメリットを享受できる可能性が
高いですのでその特徴やメリット、注意点等を
説明していきたいと思います!
制度の特徴
小規模企業共済には以下大きく3つのメリットがあります。
①将来、共済金を掛金より多く受け取れる
(一定の条件等がありますがそれは後記します)
②掛け金が節税になる(所得控除)
③資金調達の手段となる
以上の3つです。
ではそれぞれ詳しく見ていきましょう!
①将来、共済金を掛け金より多く受け取れる
まず小規模企業には共済金の種類として以下の4つの通りがあります。
※中小機構HPより抜粋
正直これを見ただけではいまいちピンときませんよね(笑)
詳しく説明していきますね!
共済金A
この共済金Aの請求事由にある
・個人事業を廃業した場合
というのは契約者が農業(他事業もしている場合はそれも含む)を
引退した時に共済金Aとして受け取れます。
ちなみに
小規模企業共済で共済金を受け取る場合は
この共済金Aで受け取る場合が一番多く受け取れます。
もともと退職金の準備や円滑な事業承継を
目的としている制度ですのでそうなるのは
納得です。
ですので、基本的にはこの請求要件を満たすように
準備していく事が大事になります。
そして、この共済金Aは
3カ月~3年の加入で元本
3年以上の加入以降は掛金よりも少しずつ
共済金の方が増えていく仕組みになっているので
加入の期間がそう長くなくても
安心して使える制度になっています!
共済金B
ただ、農家の方って
「俺の目が黒いうちは農業やるよ!」
「生涯現役だぜ!」
とお考えの方も多いかと思います。
そういう方の場合は農業を辞める前でも
共済金Bとして65歳以降に受け取る事ができます。
ただし共済金Bは
・受け取り金額が共済金Aより少なくなる
・15年以上納付期間が無いと元本割れ
という2つのデメリットがあります。
先程も書きましたが
やはり退職金の準備としての制度ですので
仕事を続けながらという場合には
少し制限がかかってしますという事ですね。
ただし!
ちょっとした裏技?のようなものがあり
契約者が事業を廃業したというケースは
配偶者や子供に経営譲渡した場合でも
認められるという事です。
そして、経営譲渡後もその事業のお手伝い
という形で農業をやっていたとしても
共済金Aの請求事由にできるとの事でした。
(H30年6月現在)
※税務署に提出する廃業届等で確認するそうです
ですので、家族経営されている場合は
そういった方法も視野に入れて計画的に
小規模企業共済を活用される事が望ましいかと
思われます。
あと細かい話ですが35年以上の納付期間が
あれば共済金AとBの給付額は同等になります。
その他給付金
準共済金や解約手当金という給付金の種類が
ありますが、これは法人化して個人としての
加入要件から外れたり、途中で解約した場合の
給付種類になりますが、20年以上の納付期間が
ないと元本割れになるので基本的には途中解約
は絶対しないような資金計画をたて利用しましょう。
※法人化は条件を満たせば共済金Aで受け取りが
できるようになりますが、ややこしくなるので
今回説明は割愛します。
②掛け金が節税になる(所得控除)
小規模企業共済は所得控除ができるので
節税にもなります。
脱サラ新規就農の方で所得控除がいまいちピンと
来ない方もいらっしゃるかもしれませんので
簡単に説明すると
農業をやって儲かった金額を元に
所得税や住民税を計算しますが
この儲かったお金から小規模企業共済の掛け金分は
差し引いて税金計算していいですよ~
っていう制度です。(経費とは少し違います)
計算元の金額が少なくなる分税金が安くなる
という事です。
では実際どれくらい安くなるのか?
これは中小機構のHPで節税分だけでなく
先ほどの共済金がどれくらい増えるのかも
簡単にシミュレーションできるようになっているので
そちらを使って説明したいと思います。
条件
加入年数・・・・20年
掛け金・・・・・3万円/月 (累計720万円)
課税所得金額・・300万円
シミュレーションの際は
この画面に入力して計算実行ボタンを
押すだけで簡単に計算できます。
そして上記の内容でシミュレーションを
行った場合の結果がこちら
この場合、元金が20年で720万円だったので
共済金Aはプラス115万9200円増え
さらに節税効果は
年間7万2800円税金が安くなり
20年で計算すると、なんと
145万6000円となります。
このように元金が増えるだけでなく
節税による効果もかなり大きいので
普通に銀行などの低い金利で貯蓄
するよりもはるかにお得で効率が
はるかにいいですよね!
③資金調達の手段となる
ここまでで小規模企業共済は
メリットがありそうだと感じて頂けたと思います。
ただ、農業に限らず事業というのは
いつ何があるかわかりませんよね。
そんな中で65歳や引退まで
お金を引き出せない事に多少不安を
感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、小規模企業共済には
貸付制度といって、掛け金の7~9割を
10万円以上2000万円以内で
比較的安い金利で(最高1.5% H30年6月現在)
借り入れできる制度があります。
もちろん農業には
・農業近代化資金
・農業経営基盤強化資金
等の驚くほどの低金利でお金を借りる事が
できる制度もあります。
ただ、小規模企業共済の貸付は
融資とは違い、自分のお金ですので
比較的スムーズにお金を借入れする事が
できます。
なので逆に言えば小規模企業共済と融資で
短期、長期等や緊急性等のお金の用途に合わせて
どれを利用する方がいいかじっくり検討できる
ようになるという事になりますね!
ご利用は計画的に。
その他
デメリット
ここまで小規模企業共済の
制度とメリットをお伝えしてきましたが
もちろん注意点やデメリットも存在します。
・途中で自由に引き出せない
・中途解約で元本割れの可能性
・インフレによる将来受け取り金額の目減り
この3つが大きな所でしょうか
ただ、途中で引き出せなくても契約者貸付制度もありますし
中途解約の元本割れもよほどの事が無い限りはしないので
そこまで心配しなくてもいいかと思います。
最後のインフレによる受取金額の目減りについても
多少のインフレについては節税効果まで考えると
そこまで気にしなくてもいいのではないでしょうか。
ですが、まったく気にしないというのも
あまりよくは無いので、その場合は
インフレ対策もできる運用先の
確定拠出年金等を併用し
さらに計画的な老後資金の準備を
される事をおススメします。
確定拠出年金についても同じように詳しく説明する記事を書きたいと思いますのでお楽しみに!(^^)
まとめ
長くなったので少しまとめると
小規模企業共済は
掛け金が月1,000円~70,000円から
自由に選べるので手軽に始める事ができて
その掛け金は所得控除で節税にもなる。
そして引退時には掛金より多く受け取れる
仕組みとなっており、万が一事業の途中で
お金が必要になった場合には契約者貸付制度も
充実しており農家の老後資金(退職金)の
準備にはうってつけの制度となっています。
ちなみに加入先は商工会や金融機関、青色申告会等が
ありますが地域によって多少異なるかと思いますので
お近くのJA等の金融機関や中小機構に確認されてみて下さい!
では長くなりましたが、小規模企業共済の説明は
以上になります。
何度も言いますが、農家の老後資金準備には
もってこいの制度ですので、ぜひ検討されて
みて下さい!
もし気になる点等があったらコメントやお問合せから
お気軽に連絡頂ければ回答します(^^)
最後までお読みいただきありがとうございました!