こんにちは、農家の方に特化して
家計のお悩み解決をお手伝いしています
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
年末は皆さんぼちぼち
「確定申告」
の準備をやり始めるのではないでしょうか。
もう、何年も農業をやっている方なんかは、
慣れたもので余裕がある方も多いでしょうが
まだ新規就農して日が浅い方なんかは
専門用語に戸惑いながらも頑張って
確定申告をされているのでしょう。
また、脱サラして新規就農し
これから農業の世界に足を踏み込むという方は
か、確定申告、、、
という状況だと思います。
そんな方のため今回は確定申告の話をしたいと思います!
どちらかというと具体的な確定申告のやり方というより
確定申告とは何か
という事や
もっと上手に経費を「積み上げて」節税する方法
という内容をお伝えしたいと思います。
後半は覚えておくとお得な節税の話なんかもご紹介しますので
・まだ確定申告をした事が無い人
・確定申告にも慣れてきてそろそろ節税も意識してみるかという人
どちらにもお役に立てる内容となっております。
目次
確定申告でやる事
確定申告というのは、その年(1月~12月)の事業(農業)に関係する売上と経費等を計算して、自分にどれくらい収入があったかを税務署に申告し税金を支払うという作業の事になります。
例えば、農作物の売り上げが1年間で500万円あったとします。
その売り上げを生み出すために使ったお金(経費)が200万円だったとしますね。
そうすると純粋に儲けたお金(農業所得)は300万円(500万円-200万円)となります。
そして、そこからもう少し所得金額を減らしていいですよ~、という所得控除の仕組みがあります。
例)基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除など
これについてはまた別の記事で詳しくお伝えしたいと思いますが
控除を上手に使いこなす事こそ一番の節税になります。
つまり確定申告の流れとしては
①売上を計算
②経費を差し引く
③控除(所得、税額)を差し引く
という事になります。
③は別の記事でご説明ですので
今回は
①売上を計算
②経費を差し引く
③控除(所得、税額)を差し引く
①と②についてお話します。
とにかく①売上と②経費のポイントは農業の事業に関係するものという事ですのでよく覚えててくださいね!
農業の売り上げには何がある?
では早速、①売上を計算についてですが
簡単に言えば農業に関する収入を合計する
という事になります。
細かい説明は割愛しますが
その合計する収入は基本的に
①販売金額・・・農畜産物(作ったもの)を売って得たお金
そのままの意味です。
②家事・事業消費金額・・・自分達で消費した分や親戚に配った分は収入に入れる必要があります。
実際のお金の流れが無いので少しややこしいですが
自分自身にその作物を売ったというイメージです。
③雑収入・・・給付金や共済金を受け取った
例)・水田・畑作経営所得安定対策および米政策改革推進対策等に係る交付金等
・農業共済金
・農協の事業分量配当金
④農産物の棚卸・・・農産物の売れ残り分
年末に残っている分はお金に変えられるものと考えるため
と大きく以上の4つがあります。
既に農業を営まれている方からすれば、当たり前じゃんと思われるかもしれませんが
新規就農する方はこういったものを収入として申告するんだなとイメージして貰えればと思います。
まぁ、とにかく収入を漏れなく計算するという事ですね。
※もちろん農業以外に収入がある場合はきちんとそれも申告されて下さいね。
農業の経費には?
農業の収入に何があるのか把握できました。
では次は、その収入を得る為に使ったお金を計算します。
いわゆる「経費」というものです。
農業の場合には大きく分けて
6つのグループの経費があります。
①租税公課
②栽培関係
③栽培補助関係
④減価償却
⑤支払い関係
⑥研修やお付き合い費用
※このグループ分けは筆者独自の考え方です。
そのグループの中にもっと細かく分けられた経費の種類(勘定科目)があり、
確定申告の時に経費を計算する時には、それぞれに振り分けする必要があります。
※この他にも特例などもあったりしますが、概要を把握するのであれば基本的にこのあたりを押さえておきましょう。
言葉に慣れるまでは少し難しかったりしますが何度かやれば慣れます。(笑)
しかし、慣れたからといって経費に落とせる分をしっかり計上できていなかったりすると損してしまいますのでそこは注意しましょう。
それぞれのグループの勘定科目
では、先ほどのグループの中に
その仕分けするべき勘定科目には
どんなものがあるのかちょっと長いですがみてみましょう!
①税金・保険料等
□租税公課(そぜいこうか)・・・事業に関わって納めた税金等
具体的には
業務用の土地建物に対する固定資産税
減価償却資産にかかる償却資産税
自動車税・重量税
自賠責保険料
任意保険料
4Hクラブ、部落会費
というものがあります。
※所得税・住民税は対象外
※交通違反などの罰金も対象外
②栽培関係
種苗費・・・種もみ代家や種苗代
肥料費・・・肥料、堆肥、土壌改良剤など
素畜費・・・畜産農家の肥育用子豚、肥育素牛、ヒナなど
飼料費・・・配合飼料、単味飼料、粗飼料など
繁殖用牛豚・果樹育成費・・・繁殖用・種付け用の牛、乳牛などの飼料代の育成費用、および果樹や茶を成木にするための種苗費、肥料費用など
農具費・・・鍬、鎌など
農薬衛生費・・・病害虫防除剤、除草剤、土壌消毒など
③栽培補助関係
修繕費・・・農機具、自動車の修理費、部品代、倉庫などの修理代
動力水道光熱費・・・ガソリン、重油、灯油など
作業用衣類費・・・作業服、手袋、帽子、マスクなど
農業共済掛金・・・水陸稲共済掛金、果樹、家畜などの共済掛金や倉庫などの火災保険料
④減価償却
減価償却費・・・1個10万円以上の農機具などは一括で経費に落とせず、何年かに分けて経費に落としていきます。(青色申告は30万円まの特例有り)
具体的には
建物(作業舎、納屋、倉庫、肥料舎など)
車両および運搬具(軽トラ、乗用車、ライトバン、トラックなど)
構築物など(果樹だな、サイロ、農業用井戸、用水路など)
農機具類(トラクター、耕うん機、防除機、刈り取り機など)
動植物(繁殖用・種付用牛・豚、めん羊、やぎ、牛、馬など)
器具備品(事務所のパソコンやその他周辺機器)10万円以上
他にも農業機械は書ききれないくらい沢山ありますので参考までに
⑤支払い関係
雇人費・・・農作業、収穫、出荷などを雇人に対する賃金
利子・割引料・・・ビニールハウスや建物、農機具などの購入資金の
貸倒引当金・・・販売未収金が貸倒れになった時に損失として計上できる
地代・賃借料・・・田・畑の小作料、土地や建物の借地料など
土地改良費・・・土地改良区、水利組合などへの負担金など
作業委託費・・・育苗、耕起、田植え、収穫、調整など
荷造り・運賃・・・畜産物の出荷運賃や資材購入運賃の全額
諸材料費・・・ビニール、段ボール、袋、竹、杭、針金、テープ
事業専従者控除・・・生計を一にしている配偶者やその他の親族への専従者給与として支払った金額
(白色申告の場合は控除となる上限額があるが、青色申告の場合は多少条件はあるものの上限額は無い)
⑥研修やお付き合い費用
研修費・・・・・・農業雑誌や本、農業技術習得の為の研究会やセミナー・講演費用、研修視察や旅行費、農業 関係の新聞、資料代金など
接待・交際費・・・農業生産、出荷、雇人、指導員、市場関係者その他接待費。生産者出荷組合員や農業研究会員の冠婚葬祭の費や交際上の費用を計上する
通信費・・・・・・電話料金、インターネット回線費用など(生活関連費を除く)、切手、はがき
雑費・・・・・・・帳簿、ボールペン、石鹸、日焼け防止剤、その他の経費に属さないもの
消耗品・・・器具備品(事務所のパソコンやその他周辺機器、エアコンなど)
※白色申告は10万円以下 青色申告は30万円以下
参考:しらなきゃ損する 「新 農家の税金(第15版)」
ちなみに勘定科目についての原則な決まりというのは存在しないので
これが一番当てはまるかなという勘定科目にきちんと仕分けできていればOKと言われています。
該当する勘定科目が無い場合には「雑費」という勘定科目に入れたり、新たに勘定科目を作るという事もできます。
プライベートの分は経費に落とせない
上で紹介したようにように事業に関係するお金であれば
これらを「経費」とする事ができます。
逆に言えばプライベートの分は
「経費」にできない事になります。
文中でも少しご紹介しましたが
①生活費(家賃、通信費、被服費、食事代)
②個人の保険料(国民年金保険料、国民健康保険、生命保険料)
③個人に対する税金(所得税、住民税など)
④罰金など(交通反則金など)
これらのものは主にプライベートの支出ですので、事業の経費として所得から差し引けません。
新規就農者が覚えておきたいルール
プライベートでの支払いも所得から差し引く方法がある
ですが、実は先ほどのプライベートで支払った分を所得から差し引けるやり方があります。
ただ、差し引けるのは
①生活費と②個人の保険料
の一部となります。
ですので
③個人に対する税金と④罰金など
については完全にプライベートですので諦めましょう。(笑)
では早速その方法をお伝えしたいと思います。
①生活費
生活費の中には家賃や光熱費、通信費などがありますが、
いくらバリバリの農家といえどもすべての仕事を圃場やハウス、倉庫でやるという事はなかなか無いでしょう。
自宅で調べものや作業をする事もありますよね。
さて、ここで思い出して貰いたいのが、経費にできる条件とは何だったのかということ
そう「事業に関係するもの」です。
つまり、自宅の家賃や光熱費そして通信費(携帯代やインターネット代)というのは、一部を経費にする事ができるんです。
なんで一部なの?と思った方は、家事按分といって、
もちろんプライベートで使用している分は経費にしてはいけないというルールがあるからです。
例えばですが、
家賃を5万円支払っている自宅(100㎡)に
仕事部屋(25㎡)があったとして
その部屋では仕事しかしないという場合は
家賃5万円のうち4分の1(25㎡/100㎡)にあたる
1万12500円が経費になりますよという仕組みです。
※完全に部屋が分かれていない場合
(くつろぐいだりもするし仕事もするという場合)
は計算方法が異なりますので、お近くの税務署にお尋ねになられると、きちんと教えてくれますので利用されてみて下さい。
そして、同じような考え方で家にあるもので
仕事に使うものであれば
■光熱費
■自宅の備品(パソコン、テレビ、ソファーなど)
こういったものも按分して経費にする事ができます。
新規就農をお考えの方は、引っ越ししたり、新しく家具を買い替えたりすることもあるかもしれませんので
青色申告するよという人は
30万円までは一括経費にできますし
もしそれで、赤字になっても繰り越せますので
こういった事を知っておかれるといいかもしれません。
他には知り合いとのお食事で
農業(事業)に関する有益な情報を聞いたりだとか
視察旅行に出かけたという場合も
交際費や旅費交通費といった勘定科目で経費となります。
細かいことですが経費を漏れなく積み上げるのは大事です。
経費になるか悩んだ時は税務署に電話です!(笑)
②個人の保険料
では次はこちらの個人の保険料を所得から差し引くという話です。
個人の保険料には
国民年金保険料、国民健康保険、生命保険料などがありましたね。
少しややこしいですが、これらは経費にはなりませんが控除という形で所得から差し引く事ができます。
この記事の最初からしっかり読んで頂いた方は覚えているかもしれませんが確定申告で所得を申告する流れは
①売上を計算
②経費を差し引く
③控除(所得、税額)を差し引く
でしたね。
この最後の③の部分で、先ほどの国民年金保険料、国民健康保険、生命保険料などを差し引くことができます。
実は、このプライベートのお金が所得から差し引けるこの控除こそが最も優秀な節税となるので、余裕がある方はしっかり利用して貰いたいものになります。
この控除には保険料の控除の他にも、もっと沢山の種類がありますので
また別の記事で改めて書きたいと思います。
(なる早で書きます!)
書きましたので合わせてご覧下さい!
こちら↓
新規就農の準備期間に使ったお金も就農後に経費にできる
開業費
事業に関係するものが経費になると
散々お伝えしてきましたが
それは事業が始まってからの分だけでなく
就農の準備をしてる時期の分も
就農してから経費にする事ができます
しかも、通常は経費というのは
その事業年度(1月~12月)で
計上するものですが
この開業費というのは
他の年度に支出として経費にすることができるので
就農直後ではなく所得が上がった時に経費に
する事ができます。
上の6つの経費のうち①~⑤のグループは
実際に農業を始めてから発生するものですので
⑥研修やお付き合い費用にあるものは
就農前の開業費として、将来経費にする事が
できるでしょう。
ですので新規就農を目指す方はなるべく
就農前から領収書を取るくせなどをつけましょう。
(領収書が一番ですが、レシートや口座記録でもOKです)
またこれも、後日記事にしたいと思います。
(も去年(2018年度)に就農したから
確定申告する前に!という方の為にも
なる早で頑張ります!笑)
書きました!記事はこちら↓
まとめ
「経費は落とすものではなく積み上げるもの」
税金を抑えて所得をいかに残すかが経営者の腕の見せ所でしょう。
しかし、「節税=経費に落とす」と考えると
何でも経費、経費といって無駄なものに
お金を使ってしまうという事にもなりかねません。
正直、お金を一番残す方法は「お金を使わない事」です
ただ、今日ご紹介したように
上手に経費を積み重ねたり、後日紹介しますが控除を利用した
結果が節税になるという事です。
節税ばっかり考えててもダメで、きちんと事業として売り上げを上げる事を最優先に考え、
経費と控除どちらも上手に積み上げていく方法を覚えるという風にやっていきましょう!
少し長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました!
少しでもご参考になれば幸いです。