こんにちは、農家の方に特化して家計のお悩み解決をお手伝いしています
農業専門ファイナンシャルプランナーの西田凌です!
農業界の大きなテーマに、後継者不足や担い手不足がありますよね。
しかし、農家さんに話を聞いていると本心かどうかはさておき、案外子供には農業は継がせないとか継がせるつもりも無いという方が思った以上に多いなという印象があります。
個人的にはこれからの世の中サラリーマンでも厳しい時代なので、農業も十分選択肢の1つかなとは思いますが、またそこは現場で感じるものがあるのでしょう。
では子供に農業を継がせない、もしくは継がないという事になった場合には、地元に残られるお子さんってどれくらいいるのでしょうか?
地方創生などが言われていますが、地方(田舎)から都会に出て戻らない方の方が圧倒的に多いのが現状でしょう。
そんな時に問題となるのが、自分の老後の面倒を看てくれる人がいなくなるという事です。
ただ介護が必要になった場合は、介護保険を利用しデイサービスや介護施設を利用することができます。(もちろんその分お金が必要になりますが)
しかし、少し厄介なのは認知症など判断能力が低下した時です。
介護施設に入居する時の契約や日常の金銭管理をどうするかという問題があります。
ご夫婦でどちらかが健康でしっかりしていれば良いのでしょうが、1人になった場合はそうはいきません。
何も農家さんだけに関係するという訳ではありませんが、今回は子供が農業を継がず近くにいないという方が、老後に困らないために知っておきたい制度について少しお話したいと思います。
目次
成年後見制度とは
成年後見制度という言葉はどこかで一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
この制度は2000年から始めった制度で、認知症や精神障害、また知的障害などで十分な判断能力をなくした人をサポートする国の制度です。
判断能力を失った方が、家庭裁判所の監督下で、青年後見人からの支援を受ける事ができます。
主に成年後見人には2つの役割があると言われています。
財産管理
本人の財産を管理します。主な管理財産は以下の3種類になります。
・現金や預貯金、有価証券など現金同等物の管理
・不動産(居住中の自宅や名義を保有する別荘や貸アパートなどの収益不動産)
・車などの動産類
銀行の口座などは成年後見人が預かることとなり、日常の支払いはもちろん収支の管理、生活プランの作成、家計簿をつけるといった金銭管理をしてくれます。
認知症になって正常な判断が出来なくても詐欺などの被害からも守ってくれます。
身上監護
もう一つは身の上監護といって身の回りの手続きをしてくれます。
具体的には
・通院、入院の手配や契約
・介護士越の選定や施設への入所などの契約、サポート
・住所変更などの登記変更、家庭裁判所への報告
判断能力が低下したり、認知症になった場合に入居する病院や介護施設を探すのことから、手続きや契約は難しいでしょうから、身上監護もとても重要となってきます。
成年後見人にできないこと
身上監護という文面から、なんだか介護と似たようなイメージを受けますが、成年後見人は身の回りの専門的なサービスは行えません。
具体的には以下のものになります。
介護や介助・・・食事や排せつの介助や清掃、病院への入院手続きの際の介助など
医療行為の代諾・・・病気やケガの治療にあたり、医者から判断や同意を求められても、後見人の事務範囲ではない
日用品の購入・・・食料品や日用品の購入は、後見人などの同意を必要とせず、本人や親族、ヘルパーが行う
身元保証人、身元引受人、入院保証人・・・福祉施設の入所契約の際に、身元保証人が必要となるが、後見人の事務範囲ではない
誰が成年後見人になるの?
さて、ここまで成年後見制度って何だろうという事を書いて来たので、成年後見制度がどんなものなのか何となくイメージができたのではないでしょうか。
では成年後見制度を受ける場合をもう少し説明したいと思います。
法定後見と任意後見
実は成年後見制度は大きく分けて「法定後見人」と「任意後見人」の2つ種類があります。
法定後見とは
まずは、法定後見ですが、これは判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所に申し立て、後見人の選定および権限を家庭裁判所が決めます。
法定後見には以下の3つの区分があります。
後見・・・判断能力が著しく欠けている(自分の名前や顔もわからない)ような場合は、後見が必要となり先ほど紹介した「財産管理」と「身上監護」の代理権が与えられる上に、判断能力低下している状態で本人が行った契約の取り消し権も与えられます。
保佐・・・判断能力が著しく不十分な場合に、後見と同じように「財産管理」と「身上監護」を行いますが、保佐の場合は家庭裁判所が審判した特定の重要な法律行為に限定され、本人の同意が必要となります。
補助・・・判断能力が不十分(物忘れが多いが自覚がある)な場合に法定後見人には補助として、特定の法律行為(金銭の貸し借りや不動産の売却など)の同意権と取り消し権が与えられます。
このように、本人の判断能力に応じて医師の診断書をもとに、家庭裁判所がその人に必要な程度を法定後見に権限を与えるというイメージです。
法廷後見人は家庭裁判所が決めるのですが、7割以上は士業(弁護士、司法書士、社会福祉士)が占めているそうです。
法定後見人への報酬
士業が法廷後見人を務める際の報酬は管理する財産の金額によって異なります。
法廷後見人は業務内容もそうですが、報酬に関してもある程度目安というのが決められています。
管理財産:~1000万円
報酬:月額2万円
管理財産:1000万円~5000万円
報酬:月額3~4万円
管理財産:5000万円超え
報酬:月額5~6万円
※他にも身の上監護に特別困難な事情があった場合や、訴訟、遺産分割調停などがあった場合は別途費用が掛かる場合があります。
任意後見とは
では次にもう一つの任意後見について説明したいと思います。
先ほどの法定後見は本人の判断能力が低下してから家庭裁判所が選任していましたが、任意後見の場合は本人と候補者の間で自由に契約が出来る制度で、本人が元気なうちに後見人を選択し内容を決めておく仕組みです。
法定後見と比べた場合のメリットとデメリットはこちら↓
メリット
自由度が高い・・・後見人や契約内容を自由に選ぶことができて、元気なうちから将来の介護や死後の扱いなど自分の意見を尊重させることができます。
スピーディー・・・事前に決めておく事ができるので、いざ判断能力が低下した時にはすぐにサポートが始まります。
デメリット
監督人が必要・・・任意後見人を自由に選ぶ事ができる反面、必ず家庭裁判所が選任した監督人が付くことになります。
費用が割高・・・・法定後見と比べて費用が割高となる
といった特徴があります。
ちなみにこの任意後見は身内など誰がなっても大丈夫で、報酬も無しでも構いません。
しかし、士業の方に依頼する場合はその契約範囲に応じて月額の報酬が必要となってきます。
任意後見にかかる費用
さらに、任意後見には監督人が必ず付きますが、こちらも資産が5000万円までは概ね月額1~2万円、それ以上となると2万5千~3万円の報酬が必要になってきます。
身近に無償で任意後見となってくれる子供や親族がいれば良いのでしょうが、任意後見を士業に依頼し、さらに監督人にも報酬を支払うとなるとその費用は馬鹿になりません。
便利な制度ですが、利用する場合は資産が枯渇しないように、費用の面をしっかり検討する必要があるでしょう。
まとめ
今回は簡単ですが、認知症などになった場合に生活の助けとなってくれる成年後見制度についてご説明しました。
農業を子供に継がせる、継がせないというのもすごく重要な問題ですが、子供が継がなかった時で近くに居ない時の老後の対策についても考えておく事が必要です。
成年後見制度自体の相談は裁判所だけでなく、士業の方、地域の社会福祉協議会や金融機関などでも相談に乗ってくれます。
どれを利用するかというのは自由ですが、こういった制度があるんだなと知っておかれると便利だと思います。
※今回の記事はナツメ社さん出版の「よくわかる!成年後見のしくみと利用法」を参考とさせて頂きました。
えは、今回も最後までお読み頂きありがとうございました!